3月11日午後2時から、宮園智子さん主催の「小さなおはなし会」が開催されました。
宮園さんは岩手県出身で現在は福岡市在住、宮沢賢治の語り部として、東日本大震災で被災した故郷への祈りを宮沢賢治の童話に込めて、毎年「小さなおはなし会」を開催されています。今年はご縁がありまして、長尾コミュニティスポットわくわくで「小さなおはなし会」開催となりました。
最初は、古楽器演奏のアンサンブル・ジグのみなさん。写真の向かって一番左が宮園さんです。「グリーンスリーブス」「シシリアーヌ」などを演奏されました。心温まる古楽器の音色は、人を安らかな気持ちにさせるのでしょう。この日は3月なのに、20℃を超える暖かさ。少し開けた窓から入る風は、もう春風。わくわくの空間が、癒しの空間になっていくのが分かります。
宮園さんの楽器は、ギターに変わりました。曲はポピュラーな、「コンドルは飛んでいく」と「瀬戸の花嫁」です。「コンドルは飛んでいく」はリコーダーの雰囲気ピッタリの曲ですが、日本情緒の「瀬戸の花嫁」もリコーダーの音色で情景が浮かんできました。
そして時刻は午後2時46分、出演者・スタッフ・お客様、全員で黙とうを捧げました。目を閉じます。聞こえてくるのは、住宅街長尾の土曜日の午後の日常。子どもが遊ぶ声や車が走る音。当たり前のようにそこにある、ありふれた日常の有難さ。
後半が始まりました。まずは田中正美さん、「いのししイノコ」(松野正子作)のお話です。回りからの短所の指摘に、悩んでいたイノコ。しかしそのイノコの短所を認めてくれたのは、イノコにとって一番大切な存在になるかもしれない人・・・じゃなくて、いのししでした。鼻を鳴らして食べるときのイノコの・・・じゃなくて、田中さんの素晴らしさは、必聴です。
次に登場は大橋かつゑさん、詩の朗読です。方言で書かれてる詩、「こんぺい糖の花」(福島県)「たった一字で」(宮城県)を、時にユーモアのある語り口で、情感豊かに朗読されました。方言での語りは、温かみを感じさせますね。
締めは宮園さんの語り、宮沢賢治作「鹿踊りのはじまり」です。主人公が6頭の鹿の様子を見ていると、やがて鹿が人間の言葉で会話しているのが聞こえてきてくるのです。6頭の鹿のやり取りの面白さを、宮園さんが方言を交えて語ると、会場は宮沢賢治の世界に引き込まれていきます。
鹿が人間の言葉を話すのを聞いていると、最後は主人公も、鹿になったような気がしてくるというお話です。鹿が人になるのではなく、人が鹿になったと錯覚するところが、人主体の目線ではない宮沢賢治の世界ですね。人と動物の共生、同じ「場」で生きて、つながって。
宮園さん主催の「小さなおはなし会」。祈り 3,11 被災地を忘れない、その想いは東北の温かみのある言葉で、コミュニティスポットわくわくを包み込みました。宮園さん、田中さん、大橋さん、アンサンブル・ジグのみなさん、ありがとうございました。